「気に入ったのなら、もっと食えよ」
「う、うん」
黒澤くんって、笑わないのかと勝手に思っていたけど。
こんなふうに、笑顔を見せることもあるんだな。
クッキーを飲み込んだあと、私はホットコーヒーを口にする。
「うん。コーヒーもまろやかで美味しい」
「そうか。それは良かった」
今も私を見つめる彼の顔つきは、とても穏やか。
「あのさ。福羽学園はヤンキー高校と呼ばれるくらい不良が多くて、毎日ケンカが多発して女子には危険だから。昨日はつい、花村に出ていけって言ってしまって悪かった」
──『ここは、お前みたいな女が来るところじゃない。今すぐ出ていけ』
もしかしてあの言葉は、私のためを思って……?
「普通なら女子が寄りつかないところを、花村は転校してきてくれた。俺たちがこうして福羽学園で出会ったのもきっと、何かの縁だと思う」
縁……か。
「もし花村が、このまま辞めずに福羽学園で頑張ると言うのなら……お前のことは、俺が全力で守ってやる。花村が安心して、学校生活を送れるように」



