目を凝らして見てみると、彼が手に持っていたのは四つ葉のクローバーだった。
「もしかして、黒澤くんが探してたのって四つ葉のクローバー?」
「ああ。栞里にやるよ」
「私に? ありがとう」
真っ暗で気づかなかったけど、どうやらここは四つ葉のクローバーがたくさん咲いている丘のようだった。
初めて来た場所のはずなのに、何だか懐かしい感じがする。
「これは、あのときのお返し」
「あのときの?」
私は首を傾ける。
もしかして、教室で黒澤くんの四つ葉のクローバーの栞を落としてしまって、その代わりに新しく栞を作って渡したときのことかな?
「俺は栞里に、誰よりも幸せになって欲しいから。四つ葉のクローバーを見つけると、幸せになれるんだろ?」
「え?」
「昔、ここでお前が……“しーちゃん”が、俺に教えてくれた」
黒澤くんが言ったそのとき、辺り一面にぶわっと強い風が吹き抜けた。
「ここは今から11年前に、俺と栞里が初めて会った場所なんだよ」



