黒澤くんの一途な愛



「栞里と本屋で再会したのは、意図的だったが……お前と再会して話すようになってから、小学生の頃のことを思い出すようになった。一生懸命勉強に励んでいた、あのときの自分を」


横峯は、昔を懐かしむような目で宙を仰ぐ。


「栞里と同じ塾に入ったのも、ただお前に近づくことが目的だったけど……俺も高校3年だし。これからは今までみたいにケンカをしない代わりに、もう一度本気で勉強を頑張ってみようと思う」

「横峯さん……」


再会してから彼が私に優しくしてくれたことの全てが、演技だったとはやっぱり思えないから。


「うん。横峯さんなら……透くんなら、大丈夫だよ。勉強やご家族のことも……きっと」


だって、私の知ってる昔の緋山透くんも、今ここにいる高校生の横峯透さんも、同じひとりの人間だもの。


「ありがとう……栞里ちゃん」


横峯さんの邪気のない笑みを見て、今……ようやく、昔の透くんと再会できたような気がした。


「ひどい目に遭わせて悪かったな」


私利私欲のために彼が私にしたことは、多分一生許せないし。もう昔みたいな友人関係に戻ることはできないけど。


透くんの将来が、横峯さんの未来が……どうか明るいものであれば良いなって思う。