突然、苛立ったような声がしてハッとする。
「人前で、いちゃつくんじゃねぇよ」
声がしたほうに目をやると、地面に横たわり気を失っていたはずの横峯が、いつの間にか起きていた。
「横峯……!」
黒澤くんが私を守るように、慌てて私の前に立つ。
「そんなに警戒しなくても、何もしねえよ。俺はお前に負けたんだから」
唇から血を流す横峯が、黒澤くんを軽く睨む。
「……栞里」
横峯に突然名前を呼ばれ、肩が揺れる。
「なっ、何?」
横峯の姿で彼とここで会ってからは、ずっとお前呼ばわりされていたから。
『栞里』と名前で呼ばれて、ちょっとびっくり。



