横峯はその場で伸びていて、ピクリとも動かない。
意識を失った横峯を黒澤くんが素早く縄で縛り上げるまで、本当にあっという間の出来事だった。
お、終わった……の?
パチパチと瞬きをして、黒澤くんに目をやる。
すると黒澤くんは、私のほうを見てニッコリと微笑んでくれた。
「すごいよ、璃久! あの横峯に、一度だけでなく二度も勝つなんて」
「璃久さん、さすがですー! かっこよかったっす」
私と一緒に勝負の行方を見守っていた赤松くんと村崎くんが、黒澤くんに抱きついた。
その様子を目の当たりにした私は、ようやくじわじわと実感が湧いてくる。
勝ったんだ。黒澤くん、横峯さんに勝ったんだ! やった……!
喜びを噛みしめるのと同時にひどく安堵した私は、一気に足の力が抜けた。
「栞里っ」
そのことにすぐさま気づいた黒澤くんが私の元に駆け寄り、抱きかかえてくれる。
「大丈夫か!? 栞里!」
「く、黒澤く……っ」
黒澤くんに力強く抱きしめられ、彼の温もりにホッとしたら、急に涙があふれて止まらなくなった。



