「うっ……嘘じゃない!」
私は、何とか声を絞り出す。
「私は、嘘なんかつかない。全部本当のことだから」
「チッ」
横峯は舌打ちすると、胸ぐらから手を離し私を乱暴に地面へと投げ飛ばした。
「痛っ」
投げ飛ばされた際にコンクリートの地面に腰を強く打ち、鋭い痛みが走る。
「お前があいつの本当の彼女だろうとそうでなかろうと、人質には変わりない。そこで大人しくしてろ……おい」
「はいっ」
横峯に顎で指示された進藤くんの手により、口に布で猿ぐつわをかまされてしまった。
「女はこのまま、捕らえておけ。絶対に逃がすんじゃねえぞ」
「分かりました」
冷たいコンクリートの地面に横たわりながら、歩いていく横峯の後ろ姿を見つめる。
横峯さん、さっきも言ったけど、どれだけ待っても黒澤くんはきっと来ないよ。
今、おばあさんが大変なときだし。そもそも私は、黒澤くんの本当の彼女じゃないんだもん。
何より、黒澤くんには忘れられない初恋の人がいるんだから。
初恋の女の子からもらった四つ葉のクローバーの栞を、何年もずっと大事にして持ち歩くくらいの……。
だから、こうして私が攫われたって、黒澤くんはきっと何とも思わない。



