「残念だけど、私をこうして捕らえていても黒澤くんは来ないと思うよ?」
「そういえば、あいつのばあさんが倒れたとかってさっきお前が話してたな」
私の話なんて何でもないように、透くんがタバコに火をつけた。
……え。透くん、タバコなんて吸うの?
まだ高校生で20歳じゃないのに、ダメじゃない……とか思ってる場合じゃないんだろうけど。
もうあなたは、本当に私の知ってる透くんじゃないんだね。
“ 緋山透くん ” じゃなくて、“ 横峯透さん ” なんだね。
そう思うと、完全に目が覚めた。
私は、口から煙を吐き出す彼をきつく睨みつける。
「違うよ。私が黒澤くんが来ないと思うって言ったのは、そういう意味じゃない」
「あ?」
「もちろんおばあさんのこともあるけど、私は……黒澤くんの本当の彼女じゃないから」
「何だって?」
透くん……横峯の眉がピクリと動く。
「黒澤くんは、進藤くんに目をつけられた私を守るために、彼氏のフリをしてくれていただけなの!」
「嘘をつくな」
タバコを口に咥えたままの横峯に胸ぐらをつかまれ、持ち上げられる。
「今さらそんな見え透いた嘘をついて、ここから逃げられるとでも思ってるのか?」
「くっ……」
地面から足が浮き上がると、苦しさに頭が痛くなった。



