「ひ、ひどいよ。騙すなんて」
「俺は、利用できるものは何でも利用する。一応昔のよしみで黒澤と別れるように忠告してやったのに、あいつと別れなかったのはお前だろ?」
乾いた笑いを浮かべながら、透くんは続ける。
「それにしても、お前に警戒されるといけないからと髪を黒く染めて変装して、昔みたいに優しいフリをして近づいたけど。こんなまんまと騙されてくれるなんて、俺もなかなかの名演技だったってことか。フハハハ」
何がおかしいのか、声高らかに笑う透くん。
進藤と緑髪の男も、透くんのそばで一緒になって笑っている。
本屋さんで透くんと再会したときは、嬉しかったのに。
本屋さんに1冊しかなかった参考書を私に譲ってくれたり、塾で会ったときに差し入れだと言って紅茶をくれたり。
昔から変わらず、優しいお兄ちゃんのような人だなって思っていたのに、まさか裏切られるなんて。
「……っう」
視界がぼやけ、冷たいものが私の頬を伝う。
最後まで、何かの間違いであって欲しいと願っていた。
だけど、これは間違いなんかじゃなかった。
透くんは……横峯さんは、黒澤くんからトップの座を奪うために私を利用した。
それが事実なんだ。
そう思うと同時に、ふつふつと言いようのない怒りが込み上げてくる。



