「……あ。雨上がったみたい」
透くんに言われてさしていた傘を下ろすと、いつの間にかザーザー降りだった雨が止み、灰色の雲の隙間からは青空が見えていた。
「良かったね、栞里ちゃん」
ふいにこちらを向いた透くんの髪は、雨に濡れたせいか、右側の髪の一部が色落ちして黄金色になっていた。
「……え。透くん、その髪……」
嫌な予感がしてきて、声が無意識に震える。
「あーあ。見られちゃったか」
透くんが、不敵な笑みを浮かべる。
「俺の髪、普段は黒じゃなくて黄金色なんだよ。スプレーで黒に染めてたのが、さっきの雨に濡れて落ちたのかな」
「黄金色……っ!」
前に蘭菜ちゃんから聞いたある人の髪の特徴を思い出し、鼓動が警鐘のように激しく鳴る。
「も、もしかしてあなた……」
私は、咄嗟に逃げなきゃと思うも……。
「栞里ちゃん、悪く思わないでね」
「んぐっ……!」
透くんに後ろから羽交い締めにされ、口と鼻を同時に布のようなもので塞がれてしまった。
抵抗する間もなく私は透くんに担ぎあげられ、黒澤くんから借りた傘がバサッと地面に落ちる。
「ほんと、バカな女だな」
透くんの冷たい声が聞こえたのを最後に、私は意識を手放した──。



