黒澤くんの一途な愛



「ご、ごめんね。その傷、今はもう大丈夫なの?」

「うん。見た目は、まだ少し痛々しいかもしれないけど。処置が早かったお陰で、失明の心配とかもないって言われたから」

「そっか。良かった……」


話を聞いて、安堵する私。


「心配してくれてありがとう、栞里ちゃん」


私を見て透くんが、ニコッと微笑む。


「それにしても、雨なかなか止まないな」


透くんが、灰色の空を軽く睨みつける。


「このあと、塾があるのに……もうしばらく待ってもこのまま止まなかったら、走っていくしかないかな」


透くんの呟きとは反対に、雨足は弱まるどころか強まる一方。


私は今日、塾は休みだけど……透くんはあるんだ。受験生だし、授業に遅刻したら困るよね。


「あの、透くん。良かったら……この傘入ってく?」


気づいたら私は、そんなことを口にしていた。