「家まで送るよ」
「えっ、でも……」
ただでさえ黒澤くんには、仮のカップルになって以来、毎日一緒に登下校してもらっているから。
塾のときまで送り迎えは申し訳ないと思って、遠慮していたんだけど。
「昨日、街で進藤や横峯の仲間に攫われそうになったって聞いたし。お前をひとりで帰すのは、心配だから」
黒澤くんの言葉に、単純な私は胸が躍る。
「ごめん。せっかくだけど私、透くんと一緒に帰ろうって話してて……あれ?」
私が黒澤くんと話しているうちに、いつの間にか透くんの姿が消えていた。
「ん? 透って、あのメガネの奴ならどこにもいないじゃねぇか」
うそ。透くん、どこ行ったんだろう。
キョロキョロと辺りを見回すも、彼らしき人は見当たらない。
「ていうか、前から気になってたんだけど。その透って男、苗字は緋山だっけ? 確か、栞里が小学生の頃の知り合いなんだよな?」
「うん。そうだよ」
「俺、あの男と似たヤツを、前に学校で見たことある気がするんだけど……」
「え?」
黒澤くんの言葉に、心臓が軽く跳ねる。
透くんが福羽学園に通ってるなんて、そんな話本人から一度も聞いたことがないけど。
──ブーッ、ブーッ。
黒澤くんと話していると、スマホが振動する。
確認すると、透くんからのメッセージだった。



