黒澤くんの一途な愛



「隣、良い?」

「うん」


透くんが、空席だった私の隣に腰をおろす。


「俺も少しだけ勉強して帰ろうかな。俺も定期テスト近いんだよね」


透くんと塾が同じだと分かってからは、会うとこうして自習室で一緒に勉強したり、雑談をするようになった。


「そういえば今更だけど、透くんは高校3年生だから受験生だよね?」

「そう。だから、受験勉強しっかりやらないといけなくて。2年の頃は遊んでたから、3年になってから焦っちゃってさ」


透くんが、参考書のページをめくる。


「栞里ちゃんは俺と違って、2年の今から頑張ってて偉いなって思うよ」

「いや、私なんて全然だよ」


そう答えつつも、「偉い」と言われたらやっぱり嬉しい気持ちになってしまう。


隣で透くんがノートにペンを走らせる音を聞いていると、私ももう少し頑張ろうと気合いが入った。