赤松くんに図星をつかれ、口を閉ざす。
「璃久、今日は南実ちゃんと街へ出かけるって言ってたから。もしかして、二人のこと見ちゃった? それで、モヤモヤしてるとか?」
う。赤松くんったら、私の心の中が見えてるの? って思っちゃうくらいに的確だよ。
「う、うん。実は……」
「そっか。そりゃあ気になるよね。自分の好きな子が、他の女の子と一緒に歩いているのを見たら」
「す、好きな子って! なっ、何を言ってるの、赤松くん!!」
つい大きな声を出してしまったからか、蘭菜ちゃんと村崎くんが一斉にこちらを向いた。
話を聞かれたくなくて、私は赤松くんの腕を引っ張り、蘭菜ちゃんたちと少し距離をとる。
「赤松くん、変なこと言わないで?」
「えー? 僕には、花村さんが恋煩いでもしてるように見えたんだけど……違った?」
「ち、違うよ! そんなんじゃないから」
ニヤッと笑う赤松くんに、私は慌てて否定する。
もう! 赤松くんのおかげで、心臓バクバクだよ。
私が黒澤くんに、恋なんてするわけない。
するわけないし、何より……しちゃダメだ。
だって黒澤くんには、今でも忘れられないくらいに大切な初恋の人がいるんだから──。
そう思いながらも、さっきの赤松くんの言葉がしばらくの間、私の頭から離れなかった。



