「まさかこんなところで会うなんて。今日は、黒澤はいないみてぇだな」
「だから、何?」
私は、進藤くんをキッと睨む。
「チッ。相変わらず、俺に対しては強気な女だな。ほんと可愛くねぇ」
「蘭菜ちゃん、逃げて!」
私は、咄嗟に叫んだ。
進藤くんの目的は私のはずだから。関係のない蘭菜ちゃんを、巻き込みたくはなかった。
「栞里ちゃ……きゃあ」
「逃げるとか、そうはさせるかよ」
蘭菜ちゃんは、進藤くんと一緒にいた緑色の頭の男に後ろから羽交い締めにされてしまう。
「ちょっと! 蘭菜ちゃんは関係ないじゃない!」
私はいつかのときみたいに進藤くんの脛に蹴りを入れようとしたけど、阻止されてしまった。
「フッ。関係ないことねぇよ。人質は、多いほうが良いからな」
「人質って……」
「黒澤をおびき出すための囮だよ。横峯さんに、花村を見かけたら連れて来いって言われてるんだ」
“横峯さん”って確か、福羽学園の前のトップだった人……。
黒澤くんにトップの座を奪われたことを、横峯さんは未だに恨んでるらしいって、蘭菜ちゃんから聞いたことがある。
「お前には、この間のばあさんのときの仕返しもまだできてなかったし……どうしてやろうかな」
進藤くんの不気味な笑みを見た瞬間、ゾッと背中に悪寒が走った。
「ほら、さっさと行くぞ!」
私は進藤くんに腕を掴まれ、路地裏に引っ張り込まれそうになる。
……いや、怖いっ。
「はっ、離して! 誰かーー!」



