「あの子……南実さんは、黒澤くんの幼なじみだから。大丈夫だよ」
私は自分にも言い聞かせるようにして、蘭菜ちゃんに言った。
「ほんとに? 栞里ちゃん、無理してない?」
蘭菜ちゃんが眉を八の字にさせ、私の顔を覗き込んだそのとき。
何かに躓いて転びそうになった南実さんの腕を、黒澤くんが掴むのが見えた。
黒澤くんが南実さんを抱き寄せるような形になり、それを目の当たりにした私は、なぜかあまりいい気持ちがしなかった。
黒澤くんは、転びそうになった南実さんを助けただけで。
南実さんが、怪我をしなくて良かったって思わなきゃいけないのに。
なんか、嫌だ……。
「しっかりしろよ」
「ごめん、りっくんー!」
再び歩き出した二人を横目に、モヤモヤした感情が私の心を包み込む。
ていうか私、黒澤くんが他の女の子と一緒にいるのを見ただけで、胸の辺りが落ち着かないなんて。
この間から、何だか変だよ……。



