おれは“祓えない退魔師”

 やっとケガが治ってきたころ、俺たち四人は、灰崎先生に呼び出された。

 「呼び出しってことは、お説教かな……?」

 伊都が不安そうに俺たちをみる。

 「怒られるようなことしたか?」

 実習の時は派手にやらかしているけど(結界壊しかけたり)、座学の時は特になにもしてない……はず。

 「祐くん、灰崎先生の授業でよう寝てるやん」
 「え! いや、あれは寝てるんじゃなくて睡魔と必死に戦ってんだよ!」
 「ノートに、解読不能な文字が書かれてたり、よだれの跡が残ってたりするもんね」
 「ちょ、伊都! バラすな!」

 慌てて伊都の口をふさぐと、東間がやれやれという風に肩を竦めた。

 「士稀くんはどう思う?」
 
 端の方でずっと黙っている士稀に、東間が声をかけた。

 「…………秘密の特訓」

 少し間をおいて、士稀がぼそりとつぶやく。

 「あの先生、特訓とかするタイプじゃねぇだろ」
 「いやいや、意外とめっちゃ強かったりして」
 「なんか裏がありそうだもんね」

 話している途中でガラッと職員室の戸が開いて、灰崎先生が出てきた。俺たちはあわてて口をつぐむ。

 「お前ら、丸聞こえなんだよ。陰口っていうのは本人に聞こえないところで言うもんだろ」

 目の前に現れた先生は、いつもとは真逆の格好をしていた。ボサボサだった髪はきれいに一つに結われていて、無精髭もすっきり剃られ、黒いスーツを着用していた。ただし、どんなに外見をきれいに取り繕っても、胡散臭さは消えない。

 「え、どうしたんっすか? その格好」

 俺たちは先生の注意そっちのけで、まじまじと先生をみる。

 「今日は山を下りて課外授業だ。依頼人の家でお祓いをする。お前たちは俺の助手だ。ついてこい」

 (課外授業? めちゃくちゃ怪しい……)

 ふと視線を感じ、振り返ると、士稀がじっとこっちをみていた。

 「なんだよ?」
 「べつに……」

 すぐに視線をそらされる。
 洞窟での件依頼、俺たちの間には気まずい空気が流れている。元々気まずかったから今更なんだけど、伊都が、気まずい空気に耐えられないから早く仲直りしてと半泣きで訴えてきた。できれば俺も仲直りしたいけどーー

 (なかなかうまくいかねぇんだよな)

 早く来い、と急かされて、俺たちはばたばたと灰崎先生についていった。