「はぁ……っ、はぁ……っ」
生きている。その実感が、遅れて押し寄せた。
「……なんとか、助かったなぁ」
東間が力なく笑う。
「伊都は……?」
「気ぃ失っとるだけや」
ほっとした、その瞬間。
「……なぜ戻ってきた」
低い声に顔を上げる。士稀が、冷たい目でこちらを見ていた。
「……は?」
「なぜ、戻ってきたと聞いている」
空気が、一気に張り詰める。
「……仲間だからだ!置いていけるわけねぇだろ!!」
士稀の表情が、わずかに歪む。
「っ、全滅していたらどうする」
「……っ」
「制御できていない力を使うな」
「助かったんだからいいじゃねぇか!!」
「いいわけないだろ」
士稀は即答し、ためいきをついた。
「判断を誤れば死ぬ」
「……っ」
「お前の行動は、無責任だ」
俺の中でなにかがブチッ、と切れた。
「ふざけんなよ!!」
俺はその場に勢いよく立ち上がった。
「じゃあ見捨てろってのかよ!?」
「そうだ」
迷いなく、はっきりとうなずいた。
「それが最適解だ」
「っ……!」
(なんだよ、それ……)
いろんな感情が混ざり合って、言葉に詰まる。
「……冷てぇな、お前」
「生存率を上げるためだ」
「そんなの仲間じゃねぇだろ!!」
その瞬間ーー
「――仲間?」
士稀の声が、わずかに揺れた。
「……ふざけるな」
低く、吐き捨てる。
「俺たちは仲良しごっこをしてるんじゃない」
空気が凍る。沈黙が重い。
「士稀くん……」
伊都がかすれた声で呼ぶ。
「……ごめん、ぼく……」
「謝るな」
鋭く遮り、伊都に冷たい視線を送る。
「足手まといになった自覚があるなら、次は動け」
「っ……」
伊都が涙目になって俯く。
「おい、言いすぎや」
東間が眉根を寄せて、口を挟んだ。
「一番危ういのはお前だ」
「……は?」
士稀はまた、あの冷たい目で俺をみる。
「力も制御できない、判断も甘い、このままだと真っ先に死ぬ」
完全に、火がついた。ぎゅっと右手を握りこんで、左の手のひらを打つ。
「……上等だよ」
おもいいきり睨み返す。
「だったら見てろ。次は、ちゃんとやる。お前に文句言わせねぇくらいな」
士稀は、しばらく黙りこんだ後
「……無理だな」
そう言って、背を向け、そのまま歩き出す。
「……っ!」
追いかけようとして、足が止まる。
(……なんなんだよ、あいつ)
悔しさと、苛立ちと、理解できない何か。ひゅぅ、と風が吹いて目をつむる。
士稀との距離がますます離れた。


