こっから先ははじめてだから


「爽ちゃんの大事な初キス、俺のもんだってこと、ずっと忘れへん。」

「………は、はいっ」

「…あかん、まだ3分経たん。場が持たんなあ。」

「……さ、3分経つまで、あとどれくらいですか?」

「んー。あと6秒ほど。」


先輩が私の両肩を持って、「5秒前、」と囁いた。


――――人生で、2度目のキス。


唇が触れ合って、冬を待ち構える木々の匂いを五感で感じ取った。


「3,2,1、」


カウントダウンが終わり、先輩の瞳がくすみブラウンの光で揺れる。夕陽が落ちそうでなかなか落ちない。


「好きやよ。爽ちゃん。」


場を2度目のキスで繋いだ先輩に、もうぎゅんぎゅん。


告白された私、心臓バッキバキ。胸が苦しいのなんのって。 
 

「うぁっ」

「……うぁ?」

「わ、わた私もっ、好きです!」

「……ほんま?」

「ほんま、です!」

「ほんまに、3分でカップル成立してしもた。」

      
先輩が口元を手の甲で抑えて、私から離れるように後ずさりをしていく。


枯れたカエデを踏みしめる音がカサカサと鳴って、コートのポケットに手を突っ込んだ先輩が笑いながら言った。


「にやける。」


にやけるというよりも、かわいい笑顔を向けてくれていて。私の方がずっとにやけた顔をしていますよ、先輩。