「あ、テント見えた!」
「もと来た道戻ったんだから、そら見えるよ。」
「せんぱい!円すいです!円すいのテント!」
三角すいのテントばかりだと思っていたら、円すいのテントもところどころにあって、民族のおうちみたいで可愛い。
スマホで写真撮りたいなあ。と、先輩の手を離して、円すいテントの方へと駆けていく。
でも平気で蹴つまずく私。平面上でも、私にとっては障害の多い道なのだ。
「わあっ」
地面に転びそうになったところで、腰に回された優しい腕っぷしに助けられた。
慌てた様子もなく、私が転ぶのが分かっていたかのように。耳元で麗しの唇がささやいた。
「爽ちゃん、やっぱ、俺がいないとあかんな。」
「うぇっ!まっ、まって!」
先輩に後ろから抱っこされる形になって、なぜか私の足が宙に浮いている。
テントの中から、楽しそうな子どもの声が聞こえてきて、どこからかバーベキューの炭火が香ってきた。
私はなぜか、先輩に持ち上げられたまま後ろにある大樹まで連れて行かれて、その大樹を背にして下ろされた。
ちょうど大樹が私たちを隠してくれて、テント地帯からはきっと見えない。
背の高い先輩でも隠してくれるほどの大樹。
ずっしりと威厳ある風格で、実は1億年と2千年前から根を張っていたんですって声が聞こえてきそう。



