こっから先ははじめてだから


赤いニット帽がよく似合うお兄さん。一眼レフを首から下げて、恐らく何かを撮っていた模様。


憂先輩が突き放しちゃったにも関わらず、笑顔で話しかけてくれた。


「……あれ?お一人ですか?」

「あ、ええと、フロントに行こうとしたら迷子になってしまいまして。」

「ああ、こっちは“フロントフォレスト”っていう野鳥を見る場所になってるんですよ。」

「ああ!そうだったんですね。」


フロント間違いに気付いて、自分で恥ずかしくなり不意にうつむく。


「あ、モズだ。」


お兄さんが刈谷の後ろの木を指さし、野鳥の位置を教えてくれる。だから自然と私は顔を上げて、モズのいる上の方を見上げた。


「丸っこい。可愛い。」

「モズは秋から冬にかけて見られる野鳥なんです。小さいけど、けっこうクチバシはカギ型になっててえげつないんですよ。」


お兄さんが一眼レフのカメラを構えて、そのモズの方をじっくりとらえている。


私は、モズが逃げないよう息を潜めて、その場でまあるいモズの方を見ていた。



「爽ちゃん!」


宇宙人を呼ぶ声がして、その方角に顔を向ける。


秋と冬の森をかけてくる、先輩の姿が見えた。


ここにあなたの妹はいますよ、と手を振ろうとすれば、なぜだかあっという間に私の元まできた先輩が、勢いよく私に抱きついてきた。