「あ、あのっ」
でも爽ちゃんは、その指をすぐに解いて。俺から距離を取るように部屋の中へと後ずさる。彼女の小さな一歩が、俺には大きな一歩に見えた。
「わ、わたし、ベッド離してもらうようにフロントに言ってきますね!」
「え?」
「行ってきます!」
すぐに振り返って、パタパタと玄関まで行ってしもた爽ちゃん。
慌てたような素振りでも、きっとブーツを履くのに手間取っとる。見んでも分かる。
俺は解かれた自分の手を見つめて、すぐに動けんかった。
動揺で心音が激しくなる。一揺れ一揺れが重く、心臓が前後に揺れているのが分かるくらいに。
俺、今、辛い感じんなっとる。秋って哀愁漂う季節よな。自分でバカみたいなことを思って、まだ白くはならないため息が森へと舞っていく。
知ってる。この感じ……。人に拒絶された時の気持ち。
自分に好意を持っとったはずの人間が、付き合えば付き合うほど自分に冷めていくこの感じ。
頭ん中で鐘が鳴る。辛いはずやのに、早う気付けって俺を急かす白い鳩が飛んで行きそうな鐘の音。



