「……今の俺、怒ってる感じやった?」
「……は、はい。」
「……ごめん。怒ってへんからね?」
「そ、そうなんですね。なら、よかった!」
先輩が動揺しているもんだから、私が笑顔を見せて安心させるようにする。大丈夫ですよって。
「爽ちゃん……俺、なんや、こないだからおかしいよなあ。飲み会で六神君に会った時といい、昨日といい、」
「え?き、昨日って……」
もしかして、会社でのキスのこと?
「ほんま、駄目やな。爽ちゃんは大事な後輩やのに。」
「…それって、つまり。私が妹みたいな存在ってことですか……?」
頑張って、先輩にとっての自分のポジションを聞いてみた。
もちろん視線は合わせられない。声も、遠くで吠えるわんこの鳴き声に被って上ずった。でもきっと、先輩が聞き取れるくらいにははっきり言えたはず。
心臓がパクパクと、餌を待つ鯉のように答えを期待している。
「…うん。」
先輩が小さく返事をして、私の心臓のパクパクも小さくなる。フェードアウトしていく頃には、そっかぁ、やっぱりねって。妙に納得してしまった。



