こっから先ははじめてだから


晴雲酒造の店内には、自由に飲める“仕込み水”が小さな井戸から流れ出ている。御膳を頂いてお腹いっぱいの中、先輩と一つの紙コップを半分ずつして飲んだ。


関節キスなんて今さらなのに。好きって意識し始めたら、つい戸惑ってしまう。 


「この辺りの水は硬水なんやね。だから日本酒も他にはない味わいなんかな。」 


納得したように、感嘆の吐息をこぼす先輩。


両手で持つ小さな紙コップが今にも潰れそう。ドキドキ心臓が鳴り止まない中飲み干した。苦いのに、好きな味。 
 



酒蔵と展示物を見学した後、先輩と店内で日本酒のお土産を買っていくことになった。


「どうしよか。甘いやつか、キレのあるやつか。」

「間をとって、純米吟醸にしませんか?」  

「うん、そうしよ。」


さり気なく口角を上げて、さり気なく私の外ハネ髪を撫でる先輩。当たり前に私に触れる先輩と、先輩に触れられる度に記念日が訪れる私。



お会計が終わって、店内から外に出れば、晴雲酒造のシンボルともいえるレンガの煙突が待ち構えている。


先輩と煙突の中に入って、その空へと続く天井を見上げた。


遠くて近い、空の光。

 
「……一緒に、写真撮る?」
「えっ、い、いいですよ?」  

  
煙突の中は1畳ほどの空間で、どこからどう撮るのかと思っていれば。先輩が私の肩を抱いて、そのまま先輩の胸に引き寄せた。


先輩の匂い。ハーブと石鹸をミックスしたような感じのやつ。


秋色のオーバーサイズ感のあるコートに頬が密着して、「爽ちゃん、上。」と指で上を見るように促される。


スマホを上からかざして、5秒前のセルフオートシャッターが、カシャリと煙突内に響いた。 
  
  
私の心にも響く、『好きです。りっくん。』って気持ち。