その視線と視線に割り込んできた、6割強ハゲのおじさん。
どこかに移動したお隣さんの座布団を陣取る。
「刈谷ちゃん、日本酒いける口なの?若いのになかなかやるね~。」
「私、日本酒ラヴなんですよぉ。」
「けっこうのん兵衛なんだね。」
「はい。あんま酔わないんで、度数高いの好きなんです。」
確か人事部の…誰だったかな。50代くらい?お偉いさんかな。
おじさんのプラカード下さい。
「刈谷ちゃん身長低いね。150㎝ある?」
「こう見えて、147㎝なんです。」
「なんか小学生が飲んでるみたいで、違和感ありまくりだわ~。」
「ふふ。」
小学生かあ。社会人になっても中学生って言われることはあるけれど、降格しちゃったかあ。
うちのおふぃすレディは皆綺麗だし、女性の魅力が反射して輝いてるもんね。
私なんて今日お座敷だって知らなかったから、チャッキーの靴下履いてきちゃったんだよ。
「小学生を酔わせちゃあいかんねえ。じゃあおじさんにお酌してもらおうかな」
「あ、はい。いいですよ。」
「総務の古馬都《こばと》さんなんかは、いい女の雰囲気出てるよねえ。」
「え?」
「真っ先にお酌しに来てくれてさあ。気遣いができる女はモテるだろうね」
「………」
あ、これって遠回しに、ちゃんとお酌をしに行けって言われてるのかなあ。
総務の古馬都さんがどの方かは存じないけれど、ビール瓶を持ってずっとお酌しに回っている綺麗な女の人はいる。
私ってば、気が利かない子。
ちょっとズキンときちゃって。ビール瓶を取る手が震えてしまう。



