こっから先ははじめてだから


真ん中の純米吟醸は、純米と大吟醸の合間。キレの中にほんのり甘さを感じて、ちょっと憂先輩みたい。他の人の前ではキレがあるのに、私にはほんのり甘い。


「……憂先輩はどれが好きですか?」

「なあ。いつ“りっくん。”ゆうてくれんの?」

「あッ、えっ、」 

 
自分でも、いつ言おういつ言おうって思ってたけれど、いきなりなんてなかなか呼べないよ。


震える唇がラ行をなかなか発してくれず、俯いてしまう。


「爽ちゃん、口についとるよ、」

「え?」   
 

私が再び先輩に視線を合わせれば、先輩が頬をムギュッと手で挟んできた。


「ごめん、ウソ。」
「うえ、うふぇ〜?!」      
「ほらゆーて?“りっくん。”」
「……りゅ、」
「りゅ?」
「りゅっきゅん」 
「誰それ。」  


眉を下げてゆるい笑顔をくれる先輩。


好き。その感情があふれ出す。認めてしまえば、もう後戻りはできないよ?


胸が熱く熱く締めつけられる。


初めての恋の動悸は、憂李月と純米吟醸のせい。

 
「あ、あのっ、」


“なんで私にキスしたんですか?もう昨日のキスはりっくんの中で抹消されてますか?” 


私は忘れられません。あんなに大事にしたいと思ったのは、数学オリンピックで銅賞を獲った以来のことですから。