なるべく夜のことは考えないようにしていた私だけど、先輩が煽るせいでどうしても昨日のキスシーンが頭の中にチラついてしまう。
今から緊張しないようにと、話題を一旦変えてみよう。
「憂先輩は?グランピングってしたことあるんですか?」
「ああ、うん。…1度きり、やけど。」
細い道路でもスピードを出して走っていく車が多い。
前を歩く先輩が、何度も私の身体を腕で守ってくれる。大きな手で守られる小さな刈谷。
大丈夫ですよ?ちゃんと先輩の後をついていってます。
お次は『晴雲酒造《せいうんしゅぞう》』という、原料であるお米から精米しているというこだわりをみせる酒蔵。ナデシコの花から発見された「花酵母」を使用した華やかな香りを出すお酒や、無農薬米で醸造したお酒もあるんだって。
「ここは隣で食事処もやっててな。爽ちゃん、そろそろお腹空いた?」
「憂先輩は?」
「あ、待って爽ちゃん。頭になんかついとる」
広い駐車場に入ったところで、先輩が私の頭に乗った“なんか”を取ってくれた。
「赤ちゃんの手や。」
そんなことを言う先輩の手には、上手に紅葉したもみじの葉がある。



