「憂さあん!飲み会参加してるの珍しいですね?!ぜひビール注がせて下さい!」
「いや、俺はいいです。」
「えー、じゃあ他のお酒頼みますぅ?」
「いや、いいです。」
憂先輩の珍しい参加とあってか、周りが必死に声をかけに行っている。憂李月と距離感バグれるまたとないチャンス。
それなのに先輩は、来る者拒みすぎ。すぱんすぱんと周りをカマイタチで切っている。
そして正座も崩さず、何事もなかったかのようにお通しの鯨ベーコンとカイワレの和え物を食べているのだ。
周り、甚大な被害が出てますよ?
それにしても先輩、綺麗な食べ方してるなあ。
周りに私との親密さを伺わせてもいけないと、ずっと見ないようにしていたのに。つい見ちゃった刈谷スコープ。
憂先輩とは、予想通り目が合って。先輩は眉を下げてふわりと宴会間初の笑顔を見せた。
慌てて日本酒 『而今《じこん》』のおちょこを両手で持ち上げて、憂李月の酔いを覚ます。



