「なんや、タイツ?みたいなん買う?今は俺の手で我慢しとって。」
よし、憂先輩の大きな手をブランケッド代わりに我慢我慢。ってどう考えても無理難題。素直な返事も出てこずに、無心で顔が熱くなる。
「ちっちゃい膝」
膝の尺度を計られて、素直に喜ぶ女性がいると思いますか先輩。ここにいます。
窓の外に見える景色が、色とりどりにファンタジーの世界を作っていく。
あそこにはピンクマニアのゾウさん、あっちには角が生えて嬉しいアザラシ様。くだらない妄想でもしておかないと、きっと私の身が持たない。
私たちが最初に訪れたのは、『武蔵鶴酒造《みさしつるしゅぞう》』という駅近の酒蔵。
風情のある建物が特徴的で、機械を使わず人の手の感覚だけで代々造られてきているのだって。
先輩も刈谷も、頭の中の感覚だけで4桁までの暗算ならいけますよ?
「この小川盆地《おがわぼんち》は清い良質な水に恵まれてんやって。酒造りに適してるらしいわ。」
「なるほど、だからこの辺りは酒蔵が多いんですね。」
「それより爽ちゃん、ほんま寒ない?」
「さ、寒ないですよ?」
電車を降りてからというもの、ずっと先輩が私の手を繋いでくれているから寒ないです。足元までしっかり暖はとれてます。



