耳に先輩の唇が触れそうな距離に気付いて、振り向けない。私ってばキスを意識しすぎなんだよぉ。
だから横目だけで先輩に笑いかけて、またすぐ窓の外に視線を移した。
「あの辺り、水面上にキラキラがあって神秘的だなあって。」
「どれどれ?」
頬と頬が擦れ合う数ミリの距離感。
憂先輩の優しい温度が伝導寸前。刈谷の心音の音頭もテクノのリズムで踊り狂う。
先輩は私にキスしたって意識はもうないのかな。やっぱり私はチワックスで、地面に四つ足をついた私と、二本足の先輩を見上げるこの距離は遠いですか?
膝丈のスカートを履いてきたせいか、ブーツとの間に覗く膝あたりがちょっと寒い。頭上の空調は刈谷の方を向いているけれど、足元からの空調はないらしい。
「爽ちゃん、寒い?」
小さな身震いをしてしまったチワックスに、先輩が首を傾げて聞いてくる。
「スカートなんて履いてきちゃって、私、馬鹿ですよね。」
あはは、と小さく笑ってみせれば、先輩も釣られるようにしてふわりと口元を緩ませた。
「ブランケット、持ってくればよかったな。」
そう言って、いつも距離感が狂っている先輩が、私の見えてる膝小僧あたりを擦り始めて。もう、え??って。頭の中が真っ白になる。



