「……んと。蚊。」
「蚊?!」
「うん、最近夏よりも秋のが蚊が多くない?」
「ああ、多い多い!キンチョールを夏前に買って、秋以降に使うと効き目が悪いんだよね〜。」
まゆゆは騒ぎすぎたのか、テーブルに突っ伏しながら私達の会話をなんとなく聞いている感じ。まぶたが重そう。
「でも刈谷、あんま相談とかしてこないし、悩みがあればなんでも言ってよね!」
明るい笑顔で、そう伝えてくれるぱるるん。
きっとむがみんも朋政課長も、この笑顔にやられたんだろうなあ。私にもこの明るさと単純さがあったら……。3杯目のグラスを回しながら、そんなことをぼんやり思った。
ぱるるんがトイレに立って、まゆゆがふて寝に走り出した頃。ソワソワとした気持ちで、再びスマホ画面を点灯させた。
すでに30分前には到着していたメッセージ。
憂先輩のくだけた文章を、じっくり読み取る。
《ほんまどないしよ。あ、そや。お詫びに酒蔵デートせえへん?旅費代おごるってことで許してくれへんかな?🥺》
関西弁に付け加えられた涙目の絵文字。これは私に想像以上の効果をもたらします。
朋政課長よりも、断然愛おしさが募る。
“あ、そや。”って、文章でもそうなっちゃうのね先輩。他の人にもこんな可愛いメッセージ送っちゃってるの?
初キスを適当にあしらわれた、さっきまでの自分勝手な心臓のズキズキすら愛おしく思えてしまう。憂先輩って、実は相当なたらし?



