こっから先ははじめてだから


「……古馬都さん、課長が会議室に来てくれって言ってましたよ。」

「うわっ、憂くんっ。びっくりしたー」


え?いつの間に??


気配がないままふわりと姿を現した憂先輩。


おかしいなあ。朋政課長の気配はすぐに察知できるのに、憂先輩の気配は察知できなかった。


「わざわざ呼びに来てくれたの憂くん?ありがとう。」

「いえ。」


満面の可愛い笑顔を放つ古馬都さん。


でも憂先輩は、すんっとしたドライな表情で応対。相反する表情がなんとも異様で、ブラックジョークよりもファニー。      

 
「憂君、古馬都にセクハラされたら遠慮なく僕に相談してね!」

「はあ。」


朋政課長が立ち上がり、憂先輩の肩を叩いて言った。東のスパダリと西のスパダリの共演ってやつ。ブロードウェイにも負けてないよ。 


「っ!そんなところで反撃しないで!」

「これあげるから許して。」

「あんたの飲みかけのコーヒーなんて死んでもいらない」

「じゃあ死んで。」

 
言い合いしながら、廊下を並んで帰っていく朋政課長と古馬都さん。ぶっちゃけ離婚秒読みのハリウッド俳優と女優みたい。


憂先輩と二人の背中をハラハラと見守っていれば、ハッと気付いたように朋政課長が振り返った。


そして早足で私の元にかけて来る。


『刈谷さん、くれぐれもその手紙頼んだよ?!春風によろしくね。』  


こっそり耳打ちしてくる朋政課長。ラブレターとCOSTAを持ったままの私に、軽くウィンクをして帰って行った。      
  
  
忙しい人だなあ。