今は飲めない私に、ちょっとした嫌がらせをする先輩。でも後頭部がずっと悲鳴を上げているから、対抗手段が見つからず。
無理にぷくっと膨れて、ふてくされた顔をしてみれば。先輩が私をじっと見てきた。穴があったら入ろうと心に決める。
ワンカップをテーブルに置くなり、先輩が私の頬を撫でて。手の平で包むようにして、それからその手がゆっくりと首元を撫でる。
じっと見つめられながら鎖骨をなぞられて。恥ずかしさよりもちょっぴりくすぐったさが勝った。
「ふふっ、くすぐった!」
「あ、あかん、」
慌てたようにパッと手を離した先輩。私の頭を持ち上げて、ソファのクッションの上に下ろしてくれる。
「俺、シャワー浴びてくるし。テレビでも見とって?」
先輩がリモコンを私の前に置いてくれて。私の方も見ずにひらひらと手を振った。だから私も一応ひらひらと返しておこう。
うっわあ〜〜〜〜。
シャワーの音を合図に、私が上半身を足の反動をつけて起こす。
何だったんだろうあれ!首筋触るって、どういう心理なの?教えて経験値が宇宙レベルのまゆゆ先生!
˳◌* ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ ┈ *◌˳
自分が先にシャワー浴びてもええんか迷ったけど、洗面所も脱衣所も浴室も掃除せえへんと爽ちゃんを入れられん。
変なことは考えんよう、掃除に集中することにした。
会社で自分をさらけ出せる唯一の爽ちゃん。愛想つかされんよう、しょうもない欲は捨てんとあかん。
でも、しょうもない欲て、なに?
自分は仕事でもプライべートでも、なんでも白黒はっきりせなあかん性格やと思うてた。
営業なんかだと、商談で取引先から曖昧な返事をもらうケースが多々ある。
コンペだの合い見積だの、比較対象を比べ、先方は会議に会議を重ねて選定する。結果を待つ間のグレーな状態が、俺は苦手だった。
当初、新卒入社時は営業部所属だったものの、自分の性には合わずすぐに異動願いを出した。
それが正解やった。神戸支部の経理部に配属されて、爽ちゃんと出会えたんやから。



