こっから先ははじめてだから


先輩路線の電車の中、端の一つ空いている席に、先輩が私に「座り?」と促してくれた。  

先輩が吊り革を余裕の高さで持って、じっと私を見てくるその視線。そっと見上げれば、ふわりとまた大きな手が私の頭を撫でた。


「せ、せんぱいの鞄、持ちます!」
「ほんま?助かります。」 


私が先輩のビジネスバッグと自分の鞄を抱えれば、先輩が「埋もれとる。」と笑いながら言った。


恥ずかしくって鞄を抱える手が震える。しっかり右と左を合わせて、鞄が落ちないよう支えた。

3駅目で降りようと席を立てば、電車とホームの間の隙間を気にしてくれたのか、先輩が私の手を取ってくれて。

車内に残る女性2人組に、「イケメンスーツの彼氏いいなあ。」と背中越しにささやかれた。

彼氏に見えます?飼い主とMIX犬って言われなくって良かったよ。


駅から出て30秒、私と同じ名前のアイスを買おうとコンビニに入った。
 

「爽ちゃん、どうする?泊まってくんなら、下着買うとく?」
「うぇっ、そ、そうですねえ……。」


先輩ってすごいなあ。耳と心が合体した恥ずかしさというやつが、全くないのかなあ。