こっから先ははじめてだから


「大丈夫か?顔色良くないし。刈谷んちってけっこう遠いんじゃなかった?」
 
「うん。だいじょうぶだよ……」

「いやよくないだろ。」


むがみんが私の腕を引いて、壁際まで連れて行って壁にもたれかからせてくれる。この日本語、合ってる?

いかんなあ。彼女持ちのむがみんに迷惑かけちゃ。 


「うちこっから割りと近いし、うち来れば?」

「え?」

「多分春風が来てるし。あいつがいれば刈谷も安心だろ。」

「いや。さすがに二人の邪魔しちゃいかんよ」

「同期に遠慮すんな。むしろ春風喜ぶって。」

 
同期の優しさが身に染みるけど。二人の愛の巣にお邪魔する図を参照すれば、刈谷の気まずさが目にプカプカと浮かぶ。


「タクシー使うか。」


むがみんが私の手を引いてくれて。

私は「いいよー。電車の中で寝てくから。」って言っているのに、この馬鹿力独走者の耳には届かない。

だから、独走者には独走者で対抗するのが正解みたいです。

目の前に現れた西の独走者、憂李月で。


「……どうしたんですか。」 
   
「わっ、す、憂さん?」


人には無関心なむがみんが、珍しく目を丸くしている。

そして夜風があるのに心なしか頬を赤くしている?え?憂先輩の美貌に見惚れちゃった?わかるわかる。