こっから先ははじめてだから


「わ、わたしは、逆というか。日本数学オリンピックに出るなんて、周りに近寄りがたいって思われて。余計に友達減っちゃって。」

「そうなん?」

「それで、4年目はもう出るのやめたんです。」

「そうだったんかあ。」

「だから、私にとって憂先輩は、あこがれでしかなくてですね。5年も参加して賞取るなんて、本当にすごいです!」


あまりにも憂先輩の温度がすぐ傍にあるから。顔も見れず、俯いたまま伝えた。真実はあたかも一つだけのありったけの想い。

薄っぺらく聞こえちゃったかな。
 
ちゃんと人の目は見た方がいい。そう思って、横目でちらりと隣を見た。


「勝手に同類や思うて、あかんな俺。刈谷さんも銅賞で終わってしもうて、俺とおんなじ気持ちで片付けようとしとってん。ごめんなあ。」

「い、いえいえ、そんな。むしろ同類に思ってもらえたなんて!光栄ですっ」

「ほんま?」

「ほんま、です。」

「なら同類項ってことで、これからも仲良うしいひん?」

「へっ?」
  
「嫌?」

「いえっ、まさか!」

「ちゃっかり後輩のID奪う“憂先輩”でも、ええ?」

「は、はい」


先輩が自分のスマホをタップして、QRコードの画面を見せてきた。

私も鞄からスマホを取り出して、先輩のスマホに映し出されたIDのQRコードを読み取ろうとする。