「総務の懇親会も送別会も歓迎会も来なかったんでしょ?」
「絶対無理だって!合同歓迎会じゃ来ないでしょ!」

 
秋晴れもいい後期の人事異動。私、刈谷(かりたに)(そう)27歳は、この度、央海倉庫(おうみそうこ)横浜支部から東京本部の経理部に異動となった。

今日は、総務、人事、経理部合同での歓迎会があるのだ。

大勢人が集まる場所はとっても苦手だけれど、主役の立場なので出席しなければならない。

同期だけなら気兼ねなく楽しめるのに、ビジネスオンリーの飲み会は信じられないほど億劫。

私の心の壁は、なかなか他人には剥がせない。


廊下から聞こえてくるのは、憂先輩と女性社員たちの声。

恐らく今日の歓迎会のお誘いなのだろう。冷淡冷徹な憂先輩は、社交の場であっても出ないものは出ない。徹底している。

  
「あ、あの憂さん!今日の合同歓迎会って、いらっしゃいます?私達、歓迎会の幹事でして!」


ちょっとの間があって。場が凍りついたように静まるのを感じた。

そして事務的に返す、先輩の冷たい声。 

 
「……ちょっと、待って。確認します。」


女性社員の間に広がる、小さなざわめき。

私も、憂先輩は一刀両断して拒否するものだと思っていたから、少し驚いた。