こっから先ははじめてだから


つまりこれって、メッセージのやり取りをしましょうってことかなあ。

会社の先輩だし、あこがれの人だし、IDの交換くらいいいよね?

ほんの7秒くらいのことだったんだけど、私がちょっぴりためらっているのがバレたみたい。長かったですか?

憂先輩が首をこてんとして、綺麗な瞳で見つめてくる。


「関西のノリでナンパする男って、好かんよなあ。」

「え?!な、なんですか?とつぜん。」

「こうやってなあ。前、ナンパしよる男、目撃して。」

「へ、へえ。そ、そうなんですか…。」


うっわあ。わたし、本気にしてしまいました。

鞄の中でスマホを探していた手を、慌ててお財布方面へと乗り換える。

そうだよねえ。先輩、すごい美人さんだし、まつげも長くてスタイルよくって。

私みたいな地球外生命体とは交換なんてしないかあ。


「あ、あの、じゃあ。おしるこ代、現金で払いますんで。」


お財布からお金を出そうとしたところで、先輩が私の手をつかんだ。


「ああ、手、冷えとる。早く座って飲もっか。」

「あ、あの、お金は、」

「俺、小銭には飽きてるから。いらんよ?」
 
「えっ」

「これからは電子的に生きよう。って、カッコつけてくスタイル。ふふ」


それだけ言って憂先輩がベンチへと歩いていくから、刈谷も慌ててぴょこぴょこついて行く。


「あ、ありがとうございます!」