「社内で公認になったら、絶対どっか飛ばされるやろなあ。」
「……やっぱり、そういうもんですよね。」
「多分な。」
先輩の頬から離した私の手を、優しく先輩の手の平に乗せられる。先輩がコートポケットから何かを取り出して、それを私の薬指につけてくれる。
「もし、離れたとしても、俺は絶対別れんから。」
「……こ、これって、」
「あ、ちゃう。まだこれは結婚前の婚前リングってことで。」
「こ、こんぜん?!」
「なに?なんか俺、変なことゆうた?」
ゆうたゆうた。
ゆうたけど、私はそれを指摘できるほどレベルは高くない。
指輪を貰ったというだけでも信じられないことなのに。婚前という言葉に頭の中身が溶きほぐされてしまう。
左手の薬指につけられた指輪は、放物線を描いたシルバーのリングだ。キラキラとしたものが闇夜でも光っていて、よく見れば放物線に沿って小さな宝石が並んでいる。
先輩から貰ったリング、もうすでに自分の心臓よりも大事にしたい。



