こっから先ははじめてだから


新卒時の研修会で告白されたこと、営業職の時女の先輩にアプローチされたこと、取引先にお見合いを持ちかけられたこと等など。


一挙、ダイジェストでお送りされる。


でも先輩は全くなびかなかったようで、家煎さんが騙して連れて行った合コンでは、トイレに行くといったっきり帰ってこなかったという逸話もあった。


最初は嫉妬にまみれる覚悟で聞いていたエピソードも、次第に不思議な感覚に見舞われていく。


きっときっと、先輩のようなスパダリにアプローチをかける女性って、皆自分に誇りを持っているような、魅力ある女性だろうに。


そんな女性に目移りするでもなく、なんで私と付き合ったのだろう?


私には、誇れるものは数学しかないと思っていたのに。


「憂ってどんなのがタイプなんだっけ?」
「あー私もそれ聞きたーい!」      
               
  
何気ない家煎さんの言葉に、水樹さんが乗っかる。


先輩、絶対無視するだろうなあ。ホタルイカの沖漬を、滑らないようお箸でぎゅっとつまんで口に運ぶ。


「小さくてかわいくて。数字とお酒に強い透明感のある女性、ですかね。」


思わず吹きそうになった口元を慌てて抑えて。ホタルイカを無理やり口内に閉じ込める。


朋政課長が、いきなり二桁の数字を音読して暗算に入る。そして水樹さんは、ピッチャーを両手で抱え飲み出した。


その場しのぎで透明感は出せそうにもないみたい。