「爽ちゃん。」
「先輩……」
ビル風が、ビルのガラスに反射して返ってくる。乱れる私の髪を、先輩が優しい手つきで直してくれた。
「あんな…。すぐ嫉妬する俺で、ほんまごめん。」
「…そんな。それは、私も同じで、」
「幼稚すぎって自分でも分かってるつもり…。でも、どうしても爽ちゃんを他の誰にも渡したないって思うてしもて。」
「…ま、まじですか。」
「やっぱ、どうかしてるわ俺。」
「先輩。どうかしているのは、私だって同じです!」
「……忖度?」
「ちゃいますよ!だって、なんの証拠もないのに、勝手に古馬都さんと先輩の仲を疑ってしまったんですから!」
先輩の熱い指先が私の頬に触れて、私の瞳をじっと見据える先輩。なぜか真顔のまま、頬をふにふにと指で遊ばれる。
「ガラスのコップは、爽ちゃん見とったらな、俺もちゃんとお礼せなあかんのやって思って、」
「……え?」
「律儀に、人にちゃんとお礼言い寄るし。俺も爽ちゃん見習わな思て。前に、古馬都さんとこの子に図書館で助けてもろたし。仕事でも助けてもろうてるからな。」
「…古馬都さん、色々大変なんですね。」
「まあな。でも自業自得っちゃ自得やし。」
「……厳しい。」
「だって。そうやない?取引先の社長と不倫しとったって。自分の営業成績上げるためにやったとしか思えんし。」
「え、ええー……。」
「いくら若気の至りったってなあ。さすがにどうかと思う。」



