「まさか子供に夫婦用のグラスをくれるなんて、びっくりだったわ。」
「…すみません。人に物を渡すとか、慣れていないもので。」
「なんか、ちょっと変わったよね憂君。」
「え?」
「ちょっととっつきやすくなったっていうかさ。」
古馬都さんが私に目配せをして、笑顔で手を振ってくれた。
「刈谷さん!本当にありがとう!」
「い、いえ!」
「色々ばれちゃったけど、今後ともよろしくね。」
いつもは綺麗にしている古馬都さんが、コートも羽織らず鼻をすすり、髪を振り乱している。
そういえば歓迎会でも率先して各部の上司にお酌しに行っていたし、きっと誰にも見えない部分で大変な思いをしているのだろうと思った。
初めて見せた古馬都さんの母の姿に、深々と頭を下げた。大君と巡ちゃんも私の元に来てお礼を言ってくれた。
「ありがとうございました。」
「ありがとう、お姉ちゃん。」
二人がきゅっと手を握ってくれて、私も自然と笑みがこぼれる。憂先輩が小さくつぶやいた。
「……ええな。」
ええですか。なにがです?先輩。
「家まで送ってく。」
「いらない。」
「家まで送ってってほしーひとー」
「はーい!」
「はいはい!」
課長と古馬都さんたちが駐車場へと消えゆく中、先輩がこっそり私の耳元でささやいた。



