こっから先ははじめてだから


「大《だい》!巡《めぐ》!」


でもその声は予想していた人物ではなく。


なぜか、朋政課長が走ってこっちにやって来る。


何事。

 
「朋《とも》ちゃん!」
「朋《とも》ちゃんだあ!」


二人とも課長目掛けて走っていき、そして課長が屈む中、二人が勢いよく飛び乗った。


「二人で電車ん乗って来たの?!もう明日から通勤できるじゃん!」       
              

「朋ちゃん元気だった?!」
「また今度朋ちゃんと動物園行きたい!」


え?


二人のパパって。まさか朋政課長じゃないよね??


どういう目で見ていいのか分からず。とりあえず蚊帳の外で、いたたまれない空気にさらされる私。課長に子供とか、…うん。似合わない。



「……爽ちゃん、」

「わっ!」


憂先輩が、こっそり私の後ろから声を掛けてきた。先輩の気配、ほんと読めないんです。


「古馬都さん、実家から連絡があったらしく、子供がいなくなったって知って慌てて駅の方に行ったみたいやわ。」

「そうなんですか?!すみません!すれ違っちゃったのかも!」

「朋政課長もいなくなったこと知っとったみたいで、一緒に探しとったらしい。古馬都さんに連絡入れたから、もう戻ってくるはず。」


目が合って、すぐに私から視線を外してしまった憂先輩。妙な沈黙で喉が鳴る。


先輩のまつ毛が揺れているのを見て。慌てて間を縫うことに努めた。


「あ、ありがとうございます!でも…まさか、古馬都さんに子供がいたなんて、びっくりで、」

「やよなあ。…古馬都さん、昔地方の営業部にいた頃、取引先の社長と不倫しとって。」

「は、はいぃ?!」

「それで子供だけ産んでしもて。あ、これ内緒な。本人には内緒にしてくれって言われとるから。」     

「…………」


思っていた以上にヘヴィーな内情で、ちょっと私では一生ついていけそうもない。


朋政課長が二人をあやすこの絵面で、癒やししか感じられないというのに。古馬都さんの過去がそこまで重いものとは到底予想もつかない。