「でも、お母さんとすれ違いになっちゃうかもしんないよ?」
女の子が、不安そうに男の子に言って。でも男の子は気持ちを曲げられない様子。
「メグ、お母さんの事情知ってるだろ?他の人に見つかったらお母さんの立場が危うくなる。」
「そうなの?なんで?」
「だってせっかく本部に異動になったのに。僕たちがいることが会社の人にバレたら色々気まずいだろ?」
「え?でももう朋ちゃんにはバレてるよ?あと、スーさんにも。」
話がいまいち見えないから、思い切って二人の素性を尋ねることにした。
「二人は、なんてお名前なの?」
交互に顔を見れば、女の子がゆっくりと声を紡いだ。
「ええと、古馬都《こばと》、巡《めぐ》っていいます。」
「あ、苗字いったらバレちゃうじゃんか!」
「あ、ほんとだ!」
巡ちゃんが慌てて自分の口を抑えるも、もう聞かなかったことには出来ない私。
古馬都って、総務の古馬都さん、だよね?あんな珍しい苗字の人、他にいるわけないだろうし。
「…私、古馬都さんのこと知ってるんだけど、呼んできましょうか?」
「それは、駄目です!お母さんの迷惑になるし。」
「うん。大丈夫。私たち、お母さんのお仕事が終わるまでお外で待ってます!」
央海倉庫のビルの裏側が、ほんの10メートル先に見える位置。
二人は、これ以上近くにはいけないと、その場で立ち止まってしまった。



