こっから先ははじめてだから


「本部には厳しい課長がいるとは伺っていましたが、やっぱり厳しいですね……。まさか、営業以外の仕事まで求められるとは思わなくって。」

「朋政課長ってオールマイティにできちゃう人だから。人にも自分と同じようににできることを求めちゃうんですよね。」    

「はあ。私、ここでやっていけるのかな……。」


先程までシャンとしていた小窪さんが、背中を丸めて悲観的にうなだれる。猫はこたつで丸くなるし、小窪さんは課長以外の前で丸くなる。


それでも課長も以前に比べたらだいぶ丸くなったらしいですよ?ハラスメントに厳しい世の中ですからね。

 

未開の地で、周りは皆仕事ができる人ばかりで、おまけに見た目までよくって。落ち込みたくなる気持ちは私にだって痛いほど分かる。


きっとポジティブにリフレーミングしろだなんて言葉をかける方が間違っている。ロジカルに励ますことの出来ない私は、彼女に相槌を打つしかないのだ。


「私も異動して来たばかりなんでよく分かります。なんで私、希望も出していないのにここに異動して来ちゃったのかなって。」

「私もです。前の支部ではたまたまビキナーズラックで大口のお客さんに当たったってだけでして。私には大した営業力だなんてものはないですし。」 

「ネガティブになりたくもなりますよね、ここって皆やたらキラキラしてません?」

「分かります!なんで女性も男性もあんなに手先まで器用なんですかね?!可笑しいですよね!?」


お互い、ネガティブな言葉を出す度に、ポジティブに大きく頷いている。あれ?これってすでにリフレーミングしてる?