私が生まれて初めて飲んだお酒。それがこの『たまござけ』だ。
とろとろの白い液体は、ドロドロすぎない粋な可愛さを持っている。そして何よりも、甘い。アルコール度数も9%と日本酒にしては低めだ。
ビードロのおちょこに、とろとろの『たまござけ』をとくとくっと注ぐ。
“たまご”というネーミングに先入観を植え付けられた脳は、すでに舌がふわふわの卵焼きを食べる態勢に入っている。
ふわりと舌触りのいいお酒を、ちびっと唇につけて一口呑んだ。
この甘さに誘われて脳に浮かぶのは、もちろん先輩のこと。連絡するべきなのかな。でも何をどう伝えていいのかも分からず。
本来なら真っ先に、飲み会の誤解を解くべきなのかも知れない。
でも、先輩が私と付き合っていることを隠したい事実や、古馬都さんへのお土産だということを隠していた事実が私の中で引っかかってしょうがない。
たまござけを3口ほど呑んでからスマホを確認する。
先輩からも特にメッセージもなく。古馬都さんにお土産を渡したことに対する、言い訳なんていうものもない。
まだたった1ヶ月しか経っていない憂先輩とのお付き合い。ドライな先輩が、私にだけ甘かったのはもう過去のことなのかな。
なかなか酔えない私に、気持ちを惑わせるはずもなく。布団にうずくまりながら幾度も涙を呑んだ。
先輩。
ねえ。りっくん……お願いだから。
「爽ちゃん、大好きやよ」って、頭撫でに来てくれませんか―――。



