こっから先ははじめてだから


「ごめんね憂君!ちょっと遅れた!課長につかまっちゃって!」


ゆるふわなミルクティー色の髪を靡かせて、バレッタで綺麗に髪を留め直す古馬都さん。


肩の後ろへと髪をやる仕草が、とっても色香を放っていて。まばらにいる社員さんたちの視線を感じる。


「いえ。大丈夫です。」


少しだけ気まずそうに視線を落とす憂先輩。私はどう見ていいのか分からず、“私なら大丈夫ですよ”と無理に平常心の笑顔を作る。


「あ、こんにちは刈谷さん!」
「こんにちは。」  


私に、まばゆい美しい笑顔を向ける古馬都さん。この人が未だ独身だというのが信じられない。


背は高く、身体のしなやかな作りが古馬都さんの美顔に大変見合っている。それに比べて身長147センチで胸だけ大きめの私は、あまりにも滑稽だ。

 
いつ見ても、どこにも勝てる要素がないことに胸の痛覚が反応する。人と比べて劣等感を感じるのは、今に始まったことじゃないのに。


なんでかな。先輩に近しい女性だと思うと、今まで感じたことないほどの絶対的敗北感を感じてしまう…。

 
「で、憂君、私に用事ってなんだった?仕事の話?」

「…いえ。」

「暫くインフルで休んでたから、きっと憂君に沢山迷惑かけたよね。」

「いえ、全然。」


はう。


憂先輩から誘ったという、真実はいつも一つの事実。


関節がカクカクと、角度をつけるようにしか動かない。


せっかくの貴重な二人のお昼休み。私が邪魔をしてはいけないと、素早く頭を下げてその場を後にしようとする。


でも、すぐに古馬都さんに呼び止められた。