こっから先ははじめてだから


「え、あの!家煎さん!」


軟体そうな背中がゆるりと振り返って、「家煎ですけどー。」と私に手を小さく振ってみせた。


「飲み会って!私も行くんですか?!」

「え?来るんじゃないの?」

「で、でも。その、お邪魔じゃないかなって。」

「お邪魔なものか。純白の爽ちゃんが来なかったら、俺自ら幹事なんて名乗り出ないよ?」


そうなの?そうとはとても思えませんけれど。


「あの……。でも、」

「というわけなんで。詳細は日をもって改めて連絡するから。」

「ええっ」

「それとも二人きりが良かった?」

「い、いえ。そんな!」

「戸惑ってる姿もかわいいね。またね!」   
 
     
非常階段から上へと上がっていく家煎さん。深い溜め息を吐いていれば、再び上の階から身を乗り出し手を振ってくる軽薄そうなその人。


さすがに男の人に不慣れな私でも分かるよ?私とは違う星の、遠い惑星にお住まいの方でしょう?重力がないから、身体が浮くほど軽いと感じるあの場所の。

  
憂先輩に、なんて言ったらいいのかなあ。


先輩ともデートできていないこの状況で、飲み会に行くのは忍びないよね? 


やっぱり、後からちゃんと断っておこう。