こっから先ははじめてだから


「うん新鮮そのものって感じ。かわいいね、爽ちゃん。」

「……へっ…」

「ほら、東京本部ってデキる大人が集結するでしょ?女性は皆傲慢豪傑高飛車って感じでね。爽ちゃんみたいに、大人しくて純粋そうな女性って珍しいんだよ。」

「へ、へぇ〜……。」


今、東京本部の女性陣全員を敵に回したことは黙っておこう。 


それにしたって、憂先輩に初めて“爽ちゃん”呼びされた時みたいな喜びやドキドキはないものだなあ。しみじみと感じる。


初めましての挨拶を交わしておよそ10秒。猛スピードで距離を縮めてきた家煎さんは、デキる大人というよりも、デキるけれど軽薄な大人といったイメージだ。


第一印象は3秒で決まるというけれど、振り返って2秒でそんなイメージを抱いてしまった。


「爽ちゃん、この間の歓迎会で日本酒頼んでなかった?」

「あっ、はい!飲んでましたけど、」 
  
「じゃあ爽ちゃんのために、日本酒が揃ってるお店探しとくね。」


小さな私の頭を、ぽんぽんと撫でて。にこやかに去っていく家煎さん。


言葉も交わしていない歓迎会で、私が飲んでいたものを覚えているなんて……。


細やかな気遣いがデキる人は、常にアンテナを張っているというのは本当だということがよく理解できた。 


いやいや、家煎さんのアンテナに関心している場合じゃないよね。何今の。私も人数に含まれてるような言い方。


経理部の部長席に、何かの資料を置いて経理部から出ていく家煎さん。彼の背中を追いかけた。