こっから先ははじめてだから


「水樹さん、旦那さんは何時くらいにお帰りなんです?飲み会は怒られない時間にお帰ししますよ。」

「旦那のことよりも、息子の方を気にかけて欲しいわね。」 

「あれ?それって遠回しに俺へのプロポーズだったりします?」

「まだバツイチになる勇気はないわよ。」

「いつでも大歓迎なんで、旦那さんと上手くいかない時は呼んでくださいね。」


あれ?なにかなこの雰囲気。唐突にお昼の再放送でやっていた時の『昼顔』を思い出しそう。


特に戸惑う様子もなく、水樹さんが、「息子は実家に預けるから。じゃ、飲み会の件よろしく〜。」と分厚いファイルを抱えて経理部から出ていく。どうやら今から会議があるらしい。


その辺りに取り残された私は、当然この方に絡まれる運命にあった。


「刈谷爽ちゃん、だよね?」

「は、はい。」

「俺、人事部の家煎歩澄《いえいりほずみ》です。よろしくね?」

「よ、よろしくお願いします!」


そういえばこの間の合同飲み会で見かけた気もする。


大勢いた人数の中、鮮明に思い出せるはずもなく。とりあえず深々と頭を下げた。