「別に、よくはないですね。一緒に飲みに行ったことなんてないですし、」
「そうなの?」
「横浜支部の同期の子が、朋政課長の後輩なんです。課長が教育係だったようで。それでちょっと喋るくらいでして。」
「そっかあ〜。刈谷さん通して、課長と一緒に飲みに行く口実作れるかなあって思ったんだけれど。」
水樹さん。既婚者ですよね?
「え、ええと。」
朋政課長に一言聞いてみましょうか?と気を利かせてみようにも、それはそれで不倫のようなものを促してしまうような気もする。
でも合コンじゃないんだし。水樹さんだって、東大寺の大仏を見るような目で、東のスパダリを拝みたいくらいの気持ちなのだろう。
会社の飲み会ぐらいで私ってば大袈裟。そんなこんな思考を巡らせていると、知らない声に遮断された。
「それなら俺が主催ってことで、飲み会やりましょうか?水樹さん。」
後ろを振り返れば、知らない男の人が立っている。コーヒー色の縦ストライプスーツ、花柄にも似た橙のネクタイ。
分け目が左寄りのダウンバングで、濃いめの茶髪だ。
「家煎《いえいり》君。ご機嫌よう。」
「御機嫌よう水樹さん。」
真ん中に挟まれる小さな刈谷。二人が、意味深に首を傾け笑顔で挨拶を交わす。



